- 社会保険労務士事務所の給料は安い?
- 仕事がきついのに低年収しか稼げない…って本当?
- 高年収を稼げる社労士になるにはどうすればいい?
結論から先に言うと、社労士事務所は「どういう規模の事務所で働くか?」によって、稼げる給料がまったく違います。
ひとくちに「社労士事務所勤務」といっても実態はさまざまです。
年収300万円でギリギリの生活をしている人もいれば、
年収1000万円までもう少し!みたいな高年収の人もいるのです。

この記事では、社労士事務所10年目の私が、「稼げる社労士」になるためのコツを解説します。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
この記事の目次
社会保険労務士事務所の給料は安い?平均年収の実態
令和元年の「賃金構造基本統計調査」によると社労士の平均年収は474万円。
残念ながら、これは決して高い数字とは言えないでしょう。
同調査によると、同じ士業の中でも税理士は平均年収はおよそ693万円ですからね。
この数字だけを見ると、「社労士って合格率5%以下の難関資格を取得したのに、給料が低いな」と感じる方が多いと思います。
なお、上述した給料は社労士の資格を持っている人になります。
なので、無資格者はさらにガクンと落ち込んで、年収300万円台という結果になっています。
未経験入社〜ベテランになるまでの社労士の年収推移
今度は私が勤めている事務所を例に、一般的な社員の年収をご紹介しますね。
初任給は未経験で年収4,200,000円からのスタートになります。
1年目では4,500,000円ほどが昇給の平均値です。
3年目になると教育対応など社内での業務も増えてきます。
この時期の年収は5,000,000円ほどです。
5年目以降は昇給するため、社内でも役職クラスの対応が求められます。
- 新規顧客の管理
- 採用面接
- オフィスマネジメント
- 社内業務管理
これができない人に関しては、
6年目以降の昇給は緩やかになり、
6,000,000円が頭打ちの金額となります。
ただ、私の事務所は比較的昇給額も高いです。
なので、ベテランでも他の事務所だと5,000,000円前後が多いですね。
【社労務士事務所で勤務10年目】私の給与明細を公開!
↓参考までにですが、中堅どころの社労士事務所で勤務10年目の私の給与明細がこちら。

月の給与は総支給額で700,000円弱(699,000円)。
月給手取りにすると57万円ほどです。
社内で退職金の積立制度があるため、1,000円だけは積立に当てています。
月30時間分の残業時間はみなし残業手当として、700,000円の中に組み込まれた支払いになっています。
その他役職手当や家族手当、資格手当といった特別な手当ての支給などはありません。
賞与はなく、1年にインセンティブとして1度、100,000円程度の支給があります。
年収では8,600,000円ほど頂いています。
「あれ?全然安くないでしょ」と思った方も多いのではないでしょうか。
私の場合は役職と社歴年数もあるので、ほかの社員と比べて貰っている方だと思います。
ですが、業務量はとても多く、残業時間が月100時間を超えているのが実情です。
もちろん、残業手当が追加で払われることはありません。
そして、「土日の出勤や自宅での業務もやらないと仕事が終わらない」という日々を過ごしています。
ですが、私は無資格かつ未経験から入社しているので給与水準には不満はないです。
とはいえ、同じ働き方をしてこの給料をもらいたいと思う方は少ないかもしれません。
ここで言いたいのは、「私は給料が多いよ」ということでは決してありません。
社労士も「働く場所」と「働き方」によって給料は大きく異なるということを伝えたいのです。
だから、給与明細を公開しました。
と言うことで、この後は、具体的にどうやって給与を上げていったのかを解説していきます。
「高年収を稼げる社会保険労務士」になるために大切なこと
しっかりと高年収を稼げる社会保険労務士になるためには、
↓以下のようなことを知っておくのが大切です。

- 社労士が独立して成功するのは「非常に厳しい」のが現実…
- 固定給以外のボーナスや、歩合インセンティブを狙わないと稼げない
- コンサルのできる社労士は年収が上がりやすい
- 大手の士業法人グループの勤務社労士を狙うのがおすすめ
- 一般企業の人事総務で働く「企業内社労士」も年収が高い
それぞれの項目について、順番に説明していきますね。
1. 社労士が独立して成功するのは「非常に厳しい」のが現実…
社労士の働き方は、社労士事務所や企業に所属して働く「勤務社労士」と、自分で独立して事務所を構える「独立社労士」の2つに分かれます。
正直、独立社労士として成功するのは難しく、あまりおすすめできません。
独立社労士として成功するのが難しい理由はいくつかありますが、
代表的な理由は以下のとおりです。
- 営業力が必要
- 顧問料が安い
まず一番大事なのが、自分で仕事をとるということです。
つまり、「営業」が問われます。
新規顧客の獲得をするためには、営業が必要です。
お客様を見つけて契約することができなくては、
社労士の知識や実務力があったとしても、全てが無駄になってしまいます。
実際に私も開業を考えていますが、
忙しい仕事をしながら顧客獲得をするためのノウハウの勉強と時間の確保ができていません。
なかなか、開業に向けて一歩が踏み出せないです。
また、もう一つの理由が顧問料です。
最初は大手に比べて、安い顧問料でないと仕事が取れません。
開業した知人の社労士の方も「顧問料が安い」と悩んでいました。
いまはAIで作業面を効率的に対応出来るため、作業面の代行には需要がなくなっているのが現状です。
さらに、各事務所が価格競争に走り、顧問料の単価を下げる流れになっています。
なので、お客さんを獲得するために、自分たちも金額を下げて勝負するしかないのです。
顧問がいつまで継続されるかわからず、収入が不安定な面もあるため開業で成功することはなかなか厳しいです。
2. 固定給以外のボーナスや、歩合インセンティブを狙わないと稼げない
社労士事務所で給与を上げる一番の近道はインセンティブを狙うことです。
↓具体的には、以下の2つの方法があります。
- インセンティブを狙う
- 新規の顧客を開拓する
助成金の申請をしている事務所はその成功報酬として、
クライアントから報酬をもらうのが一般的です。
私の会社ではその報酬のうち10%を申請を担当した従業員に還元しています。
1件80,000円ほどの成功報酬がほとんどですので、もらえるインセンティブは8,000円になりますね。
月に2件ほど申請を行えば月16,000円、年間で192,000円のインセンティブがもらえます。
また就業規則の作成費用にインセンティブを設けているケースもあります。
就業規則の相場は200,000円から600,000円ほどです。
仮に300,000円で作成した場合、10%の還元だと30,000円がインセンティブとなります。
月に1件の作成を行うと年間で360,000円のインセンティブが狙えます。
インセンティブの有無で年収が大きく変わるので、積極的に狙っていきましょう。
「顧客を開拓できる社労士」を目指す
新しくお客様を連れてくることができる社労士の方は評価も上がりやすいです。
では、どうやって新規のお客様を連れてくるのか?
一番効率的な方法は、既存のクライアント様からの紹介です。
クライアントが周りの社長や知人を紹介してくれることで顧問契約に繋がることもあります。
新規のお客様を連れてきた場合、顧問料の1ヶ月分をインセンティブとして還元している事務所も多いです。
とはいえ、「新規開拓なんてやったことない」「営業とか苦手」なんて方もいらっしゃると思います。
でも、新規開拓するのに、大切なのはたった一つだけなんです。
顧客開拓のできる社労士になるために、一番大事なこと。
それはあなたの人間性、つまり"人柄"です。
士業なので「知識が豊富な人」や「経験値が必要」というのはもちろん大事です。
ですが、それだけでは顧客の開拓は出来ません。
- 普段から親身になって話を聞いてくれる
- 相談したら最優先で対応してくれる
- いつも笑顔で話しやすい
こういう人を紹介したくなるのです。
あなたが自分の知り合いに紹介するなら、気さくで話しやすい人の方がいいですよね?
こういった意識をもってお客様と接することができれば、高年収を稼げる社労士に繋がります。
3. 「コンサルのできる社労士」は年収が上がりやすい
社労士の仕事は法律を守るように指導することだと勘違いされることがよくあります。
ですが、実際は違います。
社労士は法律を守るように指導するのではなく、
法律の内容を理解した上で、クライアントの要望に応える適切なアドバイスをする仕事です。
「法律的にはこうしないとダメだけど、会社の状況的にはできないんだよ…」
「できれば、このやり方にしたい。場合どうしたらいい?」
↑こういったお客さんの相談に回答できるのがコンサルのできる社労士です。
法律の◯✕は役所に聞けば教えてくれます。
ですが、世の中「◯か×」という2択ではありません。
その間の部分を含めて、お客様にとって最適な提案を行える社労士が求められます。
これで顧問料が決まるといっても過言ではありません。
また、同様に「最新トレンドに乗れる社労士」は給料が高い
トレンドを意識した対応も高収入を目指すためには必要です。
わかりやすいのが、直近で大騒動になったコロナを巡る対応になります。
いままではほとんど扱うことのなかった在宅勤務という働き方を選ぶ会社が急激に増えました。
また申請したことがない新しい助成金の相談も非常に多かったです。
そういった問い合わせがお客さんから来た時に、しっかり相談に乗れる社労士はなかなかいないんですよね。
トレンドに関しては過去の経験では対応できないものが多々あります。
なので、自分の努力次第でチャンスがあります。
いち早く情報を仕入れて対応することで、お客さんの信頼や社内からの信用を獲得することにつながります。
その結果、顧問料の引き上げや、それにともなう自身の収入UPを目指せるようになるのです。
結局のところは、お客様の悩みに寄り添って、最適な提案ができる社労士が給料も上がります。
結局は需要があるところ(お客様のお悩み)に、解決策を示すことが(最適な商品を提案)できるかどうかが、自分の給料に直結すると言えます。
4. 大手の士業法人グループの勤務社労士を狙うのがおすすめ
個人事務所では所長が案件を持つことが多いため、扱える顧問件数にも限りがあります。
顧問件数が売上に直結するため、
個人事務所で高収入を目指すのは難しいのが正直なところです。
勤務社労士として働くなら資金力のある、
大手事務所グループ(税理士その他の士業法人や、コンサルグループなど)を狙いましょう。
最近では初任給を引き上げている事務所も増えているため、
年収は4,000,000円以上が狙えるところを選びましょう。
未経験歓迎としている会社は教育制度も整っています。
なので、人間関係が良好で、業務に関する質問もスムーズといった場合が多いです。
業界として年齢は高くなりがちなので、平均年齢が自身と近い環境を選ぶのもおすすめです。
5. 一般企業の人事総務で働く「企業内社労士」も年収が高い
また、企業人事部でも社労士のニーズは高いです。
年収は4,000,000円程度からスタートですが、
管理職クラスになれば高年収も狙えます。
実務的な経験が少ない人は、「キャリアチェンジ」などのフレーズを使っている求人であれば教育体制がしっかりしていて働きやすいです。
ただ企業人事の場合は書類整理や管理表の更新など、
専門性のない業務だけをやらされる可能性もあります。
専門性を高められてなおかつ自分がやりたい業務が出来る会社なのか、
業務内容の欄をしっかり確認しておきましょう。
まとめ
今回は、社会保険労務士事務所の給料の実態について紹介しました。
社労士が収入を増やすには、「どういう事務所を自分の勤務先として選ぶか?」が決定的に重要です。
あなたがどれだけ優秀な社労士であったとしても、勤務先の事務所が利益をきちんと出せていなければ、お給料はいつまで経っても上がりません。
転職活動も一種のビジネスです。
金払いの良い相手をターゲットにしないと高年収は目指せません。
ホワイト環境で長く安定的に働くためには、勤務先選びは「最重要項目」といえるぐらい大切なことなので、注意しておきましょう。