作業療法士という専門職を離れる決断は、簡単なものではありません。
「せっかく資格を取ったのに…」と不安な気持ちもあるかと思います。
ですが、思い切って「作業療法士を辞めてよかった」と感じる人は少なくないようです。
私自身は一度臨床を離れ、一般企業のOLとして勤務した経験があります。
その後に改めて自分が何をしたかったのか?を考え直し、
「時短で生活期のOTとして携わる」という働き方に落ち着きましたが、
作業療法士の仕事をいったん完全に辞め、
キャリアについて改めて考えてみた経験は無駄ではなかったと思っていますよ。
このブログ記事では、私自身が作業療法士の仕事をいったん辞めた時に感じたことについて書きます。
仕事に悩んでいる現場のOTさんはぜひ参考にしてみてください。
訪問看護ステーション勤務の作業療法士です(20代後半女)
新卒で病院入職し1年勤務→心身の不調で退職(いったん作業療法士そのものを辞めました)→一般企業で営業マーケティング・広報業務として2年勤務→再び作業療法士として復帰し現職3年目。一度は作業療法士を完全に辞めた私が、再びこの道に戻るまでの転職体験談を書きます!
この記事の目次
作業療法士をいったんやめてよかった?後悔はしていない?
私自身は作業療法士をいったん辞めてよかったと思っています。
(後悔はありません)
↓その理由としては以下のようなことがあります。

- 収入が増え、将来的に昇給が見込めるようになった
- 無理のない働き方で、睡眠や食事にゆとりができた
- 仕事が「やらされるもの」から「選べるもの」に変わった
- OTの経験は異業種でも評価してもらえることを知った
1. 収入が増え、将来的に昇給が見込めるようになった
医療業界の構造や制度的な影響で、作業療法士に限らず医療介護業界の昇給には限界があります。
自己研鑽を積み重ねて努力をしても、中々昇給には結びつかないことに不満を感じている人も少なくないはずです。
異業種に転職して「成果に応じて評価される」「職種全体の給与水準が高い」職場に出会うと、将来の経済的な不安が軽減されます。
私は医療介護関連のベンチャー企業に就職したのですが、作業療法士の資格を持っていることを評価されたことに加え、ビジネススキルを身につけたり成果を上げるごとに給料が増えたことでやりがいを感じました!
2. 無理のない働き方で、睡眠や食事にゆとりができた
病院で働いていた時は書類作成、会議、訪問対応など業務量が多く残業は当たり前、忙しく動き回っていました。
新卒1年目で自分のリハビリに自信がないことや、理不尽な患者の対応もあり、なんとなく落ち込むことが増えていました。
そんなある日突然出社できなくなり、そのままうつ病と診断されて結局3ヶ月後に退職することになってしまいました。
休養後に転職しましたが、「残業が少ない」「休日がしっかり確保されている」職場で、プライベートとの両立がうまくできるようになりました。
「やめる」ことは次の選択肢を見つけること、逃げではありません。
3. 仕事が「やらされるもの」から「選べるもの」に変わった
医療従事者として勤務していると、組織の方針やルールの中で動かざるを得ない場面が多々あります。
もちろん大切なことではあるのですが、それが窮屈と感じたり理想と現実の間で苦しむこともあるかと思います。
私の場合は、学生の頃に思い描いていたOT像とかけ離れている現場が嫌で、一般企業に転職しました。
スケジュールを自分で調整したり、受け身でなく自分の意見が必要とされましたが、自分のアイデアが反映されたり、自分で選ぶ自由度の高い仕事内容がとても楽しく感じました。
4. OTの経験は異業種でも評価してもらえることを知った
もちろん業界にもよりますが、国家資格保持者というだけで一目置かれることが多いです。
国家試験に合格している=資格取得のために勉強をしてきた、努力ができる、と評価されるからです。
また、作業療法士として培った「観察力」「対人スキル」「課題分析力」などは、異業種でも高く評価されます。
特にコミュニケーションスキルが必要になる職種であるので、対人の職種だとより強みを発揮できます。
また、職場によっては医療的な知識を求められることもあります。
専門職としてのバックグラウンドは、他分野でも十分な強みになります!
作業療法士が「疲れた・辞めたい…」と感じるのはどんな時?
↓病院など医療現場で働く作業療法士が「疲れた・辞めたい」と感じてしまう瞬間としては、以下のようなものがあげられます。
- 理想と現実のギャップ
- 患者対応や家族対応に苦しむ
- 給料が安すぎる(業務負担と比較して割に合わない)
- 新人研修など教育体制が整っていない環境が不満
- ワークライフバランスの欠如
- 先輩や上司が冷たい…
- 精神科の仕事がきつい
1. 理想と現実のギャップ
学生時代には「患者さんの人生を支えるやりがいのある仕事」としてOTに魅力を感じていました。
しかし、実際の現場では時間的・制度的な制約の中で満足のいく支援ができず、思い描いていた理想とのギャップに押しつぶされそうでした。
淡々と過ぎる日々の中で、やってあげたいけどできない、できることが限られていることがとても辛く感じました。
2. 患者対応や家族対応に苦しむ
人間関係の難しさは、医療職の宿命ともいえます。
患者さんやそのご家族との意思疎通がうまくいかず、「どうしてわかってもらえないんだろう」と悩む日々が続くと、心がすり減っていきます。
「良くしてあげたい」気持ちと、受け入れてくれない現実の空回りが積み重なると、自分自身のストレスになってしまいます。
また、時には理不尽な患者や家族と関わらなければならない場面に遭遇することもあり、人間関係のストレスは避けては通れません。
3. 給料が安すぎる(業務負担と比較して割に合わない)
高い専門性が求められるにもかかわらず、給与は他業種と比べると高いとは言えません。
「忙しさのわりに収入が見合っていない」「割に合わない」と感じ、将来への不安を抱える人は少なくありません。
また、何年勤めていても昇給額が少ないため、病院や施設で年収600万円を目指す…といったことは難しいでしょう。
主任に昇進しても、お給料はほとんど変わらないなんてこともあるようです。
4. 新人研修など教育体制が整っていない環境が不満
配属された現場によっては、OJTが機能しておらず、業務を丸投げされることもあります。
私が新卒で入社した病院でも人手不足のために入社前説明会で話された内容と大きく違い、すぐに現場に放り出されてしまいとても不安に感じました。
「教えてもらえない」「相談できる人がいない」という環境では、自信も成長も得られません。
結局自信がないまま臨床に出たので、極度の不安感から体調を崩し退職に至ってしまいました。
5. ワークライフバランスの欠如
現場が忙しいあまりまとまった休みが取りにくかったり、残業が多く家に帰るのがとても遅くなってしまうと家庭との両立やプライベートの充実を阻害してしまいます。
心身の余裕が失われると、体調を崩してしまいますし、離職を考えるきっかけになります。
実際、急性期病院など忙しいところの離職率は高めであると言われています。
6. 先輩や上司が冷たい…
どこの職場でも起こり得ることですが、リーダーや管理職、先輩スタッフとの人間関係も、現場でのストレス要因になり得ます。
指導というよりは「監視」「詰問」のような関わりを受けると、職場に居場所を感じにくくなるものです。
忙しさのあまり、イライラして後輩に当たっているような人がいると「あの人がいるなら辞めたい」と思ってしまいますよね。
7. 精神科の仕事がきつい
PTとの大きな違いで、精神科領域に携われるのはOTの強みなので、学生の頃から精神科OTを志していた人も少なくないかと思います。
しかし、精神科領域は対応の難しさや精神的な負荷が大きく、特に疲弊しやすい分野です。
関係構築に時間がかかり、評価や効果が見えにくいため自分の支援が本当に届いているのか不安になることも多いです。
患者さんの疾患にもよりますが、理不尽な扱いを受けて辛いと感じることもあります。
まとめ
今回は、私自身が作業療法士(OT)の仕事をいったん辞めて「よかった」と感じたことについて率直な感想を書きました。
作業療法士は世の中から必要とされる職業であることは間違いありませんが、
辛い労働環境に置かれている人が多い職業であるのも現実です。
ひとつの職場にどっぷりつかっていると「どこでもこんなもの」「どこで働いても結局同じ」という気持ちになりがちですが、実際にはそうではありません。
特に、未経験で転職活動(就職活動)をするのと、
実務経験がある状態で転職活動するのとでは、提示される給料待遇などはかなり違ってきます。
いまの職場が辛いと感じている作業療法士さんは、
実務経験を活かして別の職場にうつることも検討してみる価値はあると思いますよ。

このブログ記事が現場で働くOTさんがキャリアを考える際の参考になれば幸いです。