- 法務部の仕事は激務できつい?
- 未経験で入社したら、どんな仕事内容からスタートするの?
企業の法務部と聞いて、どんな仕事内容をイメージされるでしょうか?
「法律ルールをあつかう部署だから、コンプライアンスもちゃんとしていて残業とかも少ないのでは?」
なんてイメージをお持ちの方も多いかもしれませんね。
残念ながら、必ずしもそうではないのです…。
この記事では、企業法務部の仕事内容について解説します。
法務部の仕事のリアルな実態を知りたい人は、ぜひ参考にしてくださいね。
この記事の目次
法務部の仕事はきついからやめとけ?あるあるな悩み6個
私が実際に法務部で仕事をしていて「きつい…」と感じる場面としては、以下のようなことがあります。
- 人材不足・人手不足で激務
- 残業が多い会社に入ると悲惨
- タフなメンタルが求められる仕事内容
- 法律知識以外のスキルも求められる
- 所属先企業によっては英語力が必要
- スピード感を持って働く能力が必要
それぞれの内容について、順番に見ていきましょう。
1. 人材不足・人手不足で激務
法務部というのは、基本的に人材不足・人手不足の状態になっている会社が多いです。
法務という仕事は専門知識が必要ですから、
社外から経験者を募集するのも、社内で新人を育てるのにも時間がかかるからです。
例えば、現在私が所属する会社は資本金1000億円規模の「大会社」ですが、
法務部員は20名程度しかいません。
営業部などは数百人・数千人単位でいるのが普通なのと比べると、
ものすごく小さな組織なんですね。
この人数で会社のすべての法務をこなしているので、
どうしても人手不足になり仕事も激務になりがちです。
なお、私は街の小さな法律事務所勤務から、上場大手企業の法務部に転職した経験があるので「同じ法律関係の仕事でも、所属する組織によってどのぐらいの業務量の違いがあるか?」について、客観的な比較ができると思っています。
2. 残業が多い会社に入ると悲惨
少しずつ改善されつつありますが、若手だった頃は、
8時半に出社して、22時ギリギリまで業務をしていた時期がありました。
- 抜本的な業務内容の見直
- 人員の補充などの改善
がなければ、忙しくてきつい状況が続く会社も多いのが現状です。
ただ、仕事の忙しさというのは、法務部に限らず入社した会社によりますよね。
そして、一定程度の規模の会社であれば、
きつい状況が続けば人員の補充がなされることが一般的です。
また、法律事務所などと比べた場合、
マネージャーなどでなければ基本的には労働法で守られ、残業代ももらえます。
なお、マネージャーになると手を動かす作業は減るので、一般スタッフより早く帰宅できる傾向です。
もちろん、一般スタッフに指示を出すなどマネジメントをするので、
責任のある立場にはなります。
そのため、人によっては一般スタッフよりも業務時間が長いこともありますが、
マネージャーになると組合員ではなくなるので、残業代などは出なくなります。
3. タフなメンタルが求められる仕事内容
仕事内容的には、タフなメンタルが求められます。
会社の命運を左右するような、
- 訴訟対応
- 重要な案件
をハンドリングしなければならないことがあります。
例えば、メーカーであれば製造物責任を問われるようなケースで、
自社の製品により「生命や身体に危害が及んだ」と訴えられるというものです。
実際、訴訟を担当していて気を病んで鬱病になってしまった方もいます。
訴訟になるほどこじれてしまった案件にもなると、解決するまでの道のりは長いです。
相手方の弁護士による主張を読むと、まるで自分の会社、
そして自分が悪いかのような気持ちになってしまうことがあります。
当然、会社としては反論していきます。
そのために、
- 外部の弁護士
- 社内の様々な関係者
の意見を統一するため、調整ハンドルを行います。
これがまた大変で、メンタルをしっかり持っていないとかなり辛い気持ちになってしまうんですよ。
4. 法律知識以外のスキルも求められる
法務部の仕事は、法律知識だけでは業務を進められません。
- 法律知識
- ビジネス感覚
- 英語力
- コミュニケーション力
などを、総合的にバランスよく身に付けておく必要があります。
ビジネスの知識がないと、軽重判断をする感覚がなく、頭でっかちになってしまいます。
例えば、低リスクの取引における契約書について、ガチガチに法律上の主張をし、
うまく締結できず、最悪の場合には取引自体なくなる…なんてことも考えられます。
その他、リスクばかりを提示して、
どうすればいいのかについてアドバイスができない…なんてこともありえます。
法律の話のみに囚われた頭でっかちの考え方をしてしまうと、
実践的な解決策に結びつかないなど、的確なアドバイスができないんですね。
5. 所属先企業によっては英語力が必要
英語力については、所属先企業の業種によって必要性の有無が変わります。
国内の取引先とのみビジネスをしている会社であれば、必要がないこともあるでしょう。
一方で、海外との取引があれば英文契約も必要になるので、英語力は「必須」というレベルで求められることになります。
TOEICでいうと、700点から800点くらいを目安にしている会社が多いでしょうか。
ただし、基本的には「読み・書き」が求められるので、日本人が苦手な「聞く・話す」の英語スキルが求められるケースは少ないと思いますよ。
6. スピード感を持って働く能力が必要
法律とビジネスを結びつけて考えるという「緻密な作業」をしながら、さらにスピード感も求められます。
特に、法務部での主な業務となる契約審査では、スピードが必須です。
なぜなら、すぐにでも取引を始めたいのに法務部の審査で時間がかかってしまっては、ビジネスそのもののスピードを落としてしまうからなんです。
- 1日で審査できる法務部員
- 審査に1週間かかる法務部員
とでは、どちらにスピード感があるかは一目瞭然ですよね。
並行して何件も扱っている場合、1週間かかってしまうことも珍しくはないですが、
いかに早く対応できるかはとても重要です。
一方で、
- 決して間違えられない性質の文書である
- 少しの違いで意味が変わってしまう
ものなので、慎重な検討が要求されます。
法務部の給料は安い?高い?
実務経験なしでもOKとするものや、法科大学院修了生の募集もあります。
これらは350万円から380万円くらいの年収で募集しています。
具体的に実務経験の年数を指定していない求人でも、400万円以上のものが多いです。
法務部で実務経験を3〜5年積んだ人の平均年収
3~5年ほどの実務経験を積んだ求人は、500万円以上で募集があります。
また、法務部の正社員の平均収入は550万円程度あり、日本の平均収入より高い傾向となります。
もし、新入社員で配属が法務部になって、きついと思っても、数年頑張ってみてください。
一度身につければ、会社が変わっても仕事内容は同じような感じなので、役に立ちます。
法務は実務経験者になれば転職成功しやすい
法務の仕事は、ひとつの会社である程度の実務経験を積めば、転職しやすいのもメリット。
未経験入社時にはきついと思うことは多いでしょう。
ですが、そこでしっかりと実務知識を身につけておけば、より条件の良いところへ転職することは、そう難しくありません。
法務は実務経験を積むほどにキャリアアップできる職種ですので、頑張って損することはないですよ。
まとめ
今回は、法務の仕事のきつさや残業の実態について説明しました。
法務として働く上で大切なのは、業務の幅や責任の重さを理解し、自分に合った職場環境を選ぶことです。
法務は専門知識が求められるため大変な部分もありますが、企業の成長を支える重要な仕事でもあります。激務になりやすい職場もあるため、労働環境をしっかり確認しながら転職を進めるとよいでしょう。
この記事が、法務の仕事を考える際の参考になれば幸いです。